2020年のオリンピックは東京で開催されることになった。これはこれでいいことではあると思う。1964年の東京オリンピックにあわせて、新幹線が通り、高速道路が出来、地下鉄も出来た。たくさんの競技場が建設され、代々木の選手村は大規模な研修センターにもなっていて、何度か利用したことがある。 あと7年でまた、大規模な国立競技場をはじめとして多くの競技場が建設あるいは改修されるのだろう。道路などのインフラも整備されていき、東京はますます便利になるに違いない。
しかし一方で、疑問と懸念が湧いてくる。
陸前高田に通っているが、陸前高田の工事はこれからだ。防潮堤は未だ壊れたままの部分も多く、それらを瓦礫にして片付けなければならない。4月以降ダンプの通行量が目に見えて増え、交通渋滞が起きるほどになった。あちこちでようやく工事が始まってきた。解体が終了してからが、本格的な建設の時期になってくると思われる。仮市役所庁舎前の山を削り、市の防災センターがようやく着工することになった。あちこちで山が削られて平地を造っている。浸水地域にも土盛りの丘が出来て来た。
ところが、多くの建設工事については、入札不調が続いている。工事はあっても応札する業者がいない。被災地全体での工事量に、建築資材も人手も不足しているという。被災地では、予算はあっても工事が進まないという状況が続いている。
これは被災地に限ったことではない。先日札幌で「体育館の新築工事に応札が無く、予算を1割増しにして再度入札を行う」とニュースで聞いた。今こうした現状が全国的に起きている。被災地に人材と資材を集中しているのであれば、他の地域はある程度我慢して貰わなくてはならない。
この資材と人材不足はいつまで続くであろうか?陸前高田にいると未だ未だこれからという印象を拭えない。広大な原野となってしまった浸水地域に、瓦礫の最終処分工場が建設された。別の浸水地位には、これから生コン工場が建設され、高さ12.5mの防潮堤を沿岸部全体に造っていかなければならない。膨大な工事である。高台移転するための用地を確保するために、山を削らなければならない。その土を使って浸水地域のかさ上げをしていくことになる。高田地区で5m、今泉地区では10m以上のかさ上げが予定されている。これだけでもこれまでに例の無い規模の工事になる。その他に、公営住宅や公的施設の建設もある。膨大な工事が予定されているのだ。
オリンピックまでの7年は、被災地復興計画の7年と重なっている。お互いに待ったなしの状態になってくるだろう。
建設関係業界で続いているこの異常なバブル状態で、最も懸念されるのは、工事が進まないことと工事が高騰することである。オリンピック関連建設と被災地とが奪い合うことのないように、いや、被災地の工事が遅れないように、今から早め早めに資金を投入し工事を進めて頂きたい。
建設業界には、楽な仕事、高い仕事を優先せず、被災者の生活関連工事を優先する良識を持って貰いたい。
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